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 『婦系図』 青空文庫

 苦労人《くろうと》が二人がかりで、妙子は品のいい処へ粋になって、またあるまじき美麗《あでやか》さを、飽かず視《なが》めて、小芳が幾度も恍惚《うっとり》気抜けのするようなのを、ああ、先生に瓜二つ、御尤《ごもっと》もな次第だけれども、余り手放しで口惜《くやし》いから、あとでいじめてやろう、とお蔦が思い設けたが、……ああ、さりとては……
 いずれ両親には内証《ないしょ》なんだから、と(おいしかってよ。)を見得もなく門口でまで云って、遅くならない内、お妙は八ツ下りに帰った。路地の角まで見送って、ややあって引返《ひっかえ》した小芳が、ばたばたと駈込んで、半狂乱に、ひしと、お蔦に縋りついて、

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