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 『蛇くひ』 青空文庫

 西は神通川の堤防を以て劃《かぎり》とし、東は町尽《まちはづれ》の樹林境を為し、南《みなみ》は海に到りて尽き、北は立山《りふざん》の麓に終る。此間《このあひだ》十里見通しの原野にして、山の佳景いふべからず。其《その》川幅最も広く、町に最も近く、野の稍《やゝ》狭き処を郷《がう》屋敷田畝と称へて、雲雀の巣猟《すあさり》、野草《のぐさ》摘《つみ》に妙なり。

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