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 『雛がたり』 青空文庫

 雛――女夫雛《めおとびな》は言うもさらなり。桜雛《さくらびな》、柳雛《やなぎびな》、花菜《はなな》の雛、桃の花雛、と緋《ひ》と、紫《ゆかり》の色の菫雛《すみれびな》。鄙《ひな》には、つくし、鼓草《たんぽぽ》の雛。相合傘《あいあいがさ》の春雨雛《はるさめびな》。小波《ささなみ》軽く袖で漕ぐ浅妻船《あさづまぶね》の調《しらべ》の雛。五人囃子、官女たち。ただあの狆《ちん》ひきというのだけは形も品もなくもがな。紙雛《かみひいな》、島の雛、豆雛《まめひいな》、いちもん雛と数うるさえ、しおらしく可懐《なつかし》い。

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