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『蛇くひ』 青空文庫
都人士もし此事を疑はば、請ふ直ちに来れ。上野の汽車最後の停車場《ステエシヨン》に達すれば、碓氷峠の馬車に揺られ、再び汽車にて直江津に達し、海路一文字に伏木に至れば、腕車十銭富山に赴き、四十物町《あへものちやう》を通り抜けて、町尽《まちはづれ》の杜《もり》を潜《くゞ》らば、洋々たる大河と共に漠々《ばく/\》たる原野を見む。其処に長髪敝衣の怪物を見とめなば、寸時も早く踵《くびす》を回《かへ》されよ。もし幸《さいはひ》に市民に逢はば、進んで低声《ていせい》に(応)は?と聞け、彼の変ずる顔色は口より先に答をなさむ。
無意無心なる幼童は天使なりとかや。げにもさきに童謡ありてより(応)の来《きた》るに一月《ひとつき》を措かざりし。然《しか》るに今は此歌稀々《まれ/\》になりて、更にまた奇異なる謡《うた》は、
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