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『古狢』 青空文庫
三人とも振返ると、町並樹の影に、その頸許《えりもと》が白く、肩が窶《やつ》れていた。
かねて、外套氏から聞いた、お藻代の俤《おもかげ》に直面した気がしたのである。
路地うちに、子供たちの太鼓の音が賑《にぎ》わしい。入って見ると、裏道の角に、稲荷神《いなりがみ》の祠《ほこら》があって、幟《のぼり》が立っている。あたかも旧の初午《はつうま》の前日で、まだ人出がない。地口行燈《じぐちあんどん》があちこちに昼の影を浮かせて、飴屋《あめや》、おでん屋の出たのが、再び、気のせいか、談話中の市場を髣髴《ほうふつ》した。
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