検索結果詳細


 『春昼』 泉鏡花を読む

 素肌へ、貴下、嬰児を負ふやうに、それ、脱いで置いたぼろ半纏で、しつかりくるんで、背負上げて、がくつく腰を、鍬を杖にどツこいなぢや。黙つて居ろよ、何んにも言ふな、屹と誰にも饒舌るでねえぞ、と言ひ続けて、内へ帰つて、納戸を閉切つて暗くして、お仏壇の前へ筵を敷いて、其処へざく/\と装上げた。尤も年が経つて薄黒くなつて居たさうでありますが、其の晩から小屋は何んとなく暗夜にも明るかつた、と近所のものが話でござつて。

 303/628 304/628 305/628


  [Index]