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 『婦系図』 青空文庫

「可いじゃねえか、お互《たげえ》だ。こんな処へ来て何も、向う様だって遠慮はねえ。大家様の隠居殿の葬礼《ともれい》に立つとってよ、町内が質屋で打附《ぶつか》ったようなものだ。一ツ穴の狐だい。己《おら》あまた、猫のさかるような高い処は厭だからよ。勘当された息子じゃねえが、二階で寝ると魘《うな》されらあ。身分相当割床と遣るんだ。棟割《むなわり》に住んでるから、壁隣の賑《にぎや》かなのが頼もしいや。」
「不可《いけ》ませんよ、そんなことをお言いなすっちゃ、選好《えりこの》んでこのお座敷へいらっしゃらないだって、幾らでも空いてるじゃありませんか。」

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