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 『義血侠血』 青空文庫

「ああ、言った。でもそう言わねえと乗らねえもの」
 御者は黙して頷きぬ。たちまち鞭の鳴るとともに、二頭の馬は高く嘶きて一文字に跳ね出だせり。不意を吃《くら》いたる乗り合いは、座に堪らずしてほとんど転《まろ》び墜ちなんとせり。奔馬は中《ちゅう》を駈けて、見る見る腕車を乗っ越したり。御者はやがて馬の足掻きを緩め、渠に先を越させぬまでに徐々として進行しつ。

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