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『高野聖』
泉鏡花を読む
それがさ、骨に通つて冷たいかといふと然うではなかつた。熱い時分ぢやが、理窟をいふと恁うではあるまい、私の血が沸いたせゐか、婦人の温気か、手で洗つてくれる水が可い工合に身に染みる、尤も質の佳い水は柔かぢやさうな。
其の心地の得もいはれなさで、眠気がさしてでもあるまいが、うと/\する様子で、疵の痛みがなくなつて気が遠くなつて、ひたと附ついて居る婦人の身体で、私は花びらの中へ包まれたやうな工合。
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