検索結果詳細


 『高野聖』 泉鏡花を読む

 それがさ、骨に通つて冷たいかといふと然うではなかつた。熱い時分ぢやが、理窟をいふと恁うではあるまい、私の血が沸いたせゐか、婦人の温気か、手で洗つてくれる水が可い工合に身に染みる、尤も質の佳い水は柔かぢやさうな。
 其の心地の得もいはれなさで、眠気がさしてでもあるまいが、うと/\する様子で、疵の痛みがなくなつて気が遠くなつて、ひたと附ついて居る婦人の身体で、私は花びらの中へ包まれたやうな工合。

 309/622 310/622 311/622


  [Index]