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 『海神別荘』 華・成田屋

公子  (爽(さわやか)に)獄屋ではない、大自由、大自在な領分だ。歎くもの悲しむものは無論の事、僅少の憂(うれい)あり、不平あるものさえ一日も一個(ひとり)たりとも国に置かない。が、貴女には既に心を許して、秘蔵の酒を飲ませた。海の果、陸の終(おわり)、思って行かれない処はない。故郷(ふるさと)ごときはたた一飛(ひととび)、瞬きをする間に行かれる。(愍むごとくしみじみと顔を視る)が、気の毒です。
貴女に、その驕(おごり)と、虚飾(みえ)の心さえなかったら、一生聞かなくとも済む、また聞かせたくない事だった。貴女、これ。
(美女顔を上ぐ。その肩に手を掛く)ここに来た、貴女はもう人間ではない。

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