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『歌行燈』
従吾所好
「こなひだ山田の新町から住替へた、こんの島家の新妓ぢや。」と言ひながら、鼻赤の若い衆は、覗いた顔を外に曲げる。
と門附は、背後の壁へ胸を反らして、一寸伸上るやうにして、戸に立つ男の肩越しに、皎とした月の廓の、細い通を見透かした。
駒下駄は些と音低く、未だ、からころと響いたのである。
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