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 『婦系図』 青空文庫

 早瀬は、妹が連れて父の住居《すまい》へも来れば病院へも二三度来て知っているが、新聞にまで書いた、塾の(小使)と云う壮佼《わかいもの》はどんなであろう。男世帯だと云うし、他に人は居ないそうであるから、取次にはきっとその(小使)が出るに違いない、と籠勝《こもりがち》な道子は面いものを見もし聞《きき》もしするような、物珍らしい、楽しみな、時めくような心持《ここち》もして、早や大巌山が幌に近い、西草深のはずれの町、前途《さき》は直ぐに阿部の安東村になる――近来《ちかごろ》評判のAB横町へ入ると、前庭に古びた黒塀を廻《めぐ》らした、平屋の行詰った、それでも一軒立ちの門構《もんがまえ》、低く傾いたのに、独語教授、と看板だけ新しい。

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