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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 枕を竝べた上人の姿も朧げに明は暗くなつて居た、早速燈心を明くすると、上人は微笑みながら続けたのである。
「さあ、然うやつて何時の間にやら現とも無しに、恁う、其の不思議な、結構な薫のする暖い花の中へ柔かに包まれて、足、腰、手、肩、頸から次第に天窓まで一面に被つたから吃驚、石に尻餅を搗いて、足をの中に投げ出したから落ちたと思ふ途端に、女の手が背後から肩越しに胸をおさへたので確りつかまつた。

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