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 『婦系図』 青空文庫

 大勢寄ってなさる仕事を、貴女方、各々《めいめい》御一人宛《ずつ》で、専門に、完全に、一人《にん》を救って下さるわけには参りませんか。力が余れば二人です、三人です、五人ですな。余所《よそ》の子供の世話を焼く隙《ひま》に、自分の児に風邪を感《ひ》かせないように、外国の奴隷に同情をする心で、御自分お使いになる女中を勦《いたわ》ってやって欲しいんですが、これじゃ大掴《おおづか》みのお話です、何もそれをかれこれ申上げるわけではないのです。
 ところが、差当り、今目の前に、貴女の一雫《ひとしずく》の涙を頂かないと、んでもに切れない、あわれな者があるんです。
 この事に就きましては、私は夜の目も合わないほど心を苦めまして。」

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