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 『婦系図』 青空文庫

 と胸へ、しなやかに手を当てたは、次第に依っては、直《すぐ》にも帯の間へ辷って、懐紙《ふところがみ》の間から華奢な(嚢物《ふくろもの》)の動作《こなし》である。道子はしばしば妹の口から風説《うわさ》されて、その暮向《くらしむき》を知っていた。
 ト早瀬の声に力が入って、
「金子《かね》にも何にも、私が、自分の事ではありません。」

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