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『婦系図』
青空文庫
「いや、貴女でなくては不可《いか》んのです。ですから途方に暮れます。その者は、それにもう死にかかった病人で、翌日《あす》も待たないという容体なんです。
六十近い老人で、孫子はもとより、親類《みより》らしい者もない、全然《まるっきり》やもめで、実際形影相弔うというその影も、破蒲団《やぶれぶとん》の中へ消えて、骨と皮ばかりの、その皮も貴女、褥摺《とこず》れに摺切れているじゃ
ありません
か。
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