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『婦系図』
青空文庫
六十近い老人で、孫子はもとより、親類《みより》らしい者もない、全然《まるっきり》やもめで、実際形影相弔うというその影も、破蒲団《やぶれぶとん》の中へ消えて、骨と皮ばかりの、その皮も貴女、褥摺《とこず》れに摺切れているじゃありませんか。
日の光も見えない目を開いて、それでただ一目、ただ一目、貴女、夫人《おくさん》の
顔
が見たいと云います。」
「ええ、」
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