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 『婦系図』 青空文庫

「御介抱にも及びません、手を取って頂くにも及びません、言《ことば》をお交わし下さるにも及びません、申すまでもない、金銭の御心配は決して無いので。真暗《まっくら》な地獄の底から一目貴女を拝むのを、仏とも、天人とも、山の端《は》の月の光とも思って、一生の思出に、莞爾したいと云うのですから、お聞届け下さると、実に貴女は人間以上の大善根をなさいます。夫人《おくさん》、大慈大悲の御心持で、この願いをお叶え下さるわけには参りませんか、十分間とは申しません。」
 と、じりじりと寄ると、姉夫人、思わず膝を進めつつ、
「どこの、どんな人でございますの。」

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