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 『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫

 尤もなかなかの悪戯もので、逗子の三太郎……その目白鳥――がお茶の子だから雀の口真似をした所為でもあるまいが、日向の縁《えん》に出して人のいない時は、籠のまわりが雀どもの足跡だらけ。秋晴《あきばれ》の或日、裏庭の茅葺小屋の風呂の廂へ、向うへ桜山を見せて掛けて置くと、午《ひる》少し前の、いい天気で、閑《しずか》な折から、雀が一羽、……丁ど目白鳥の上の廂合《ひあわい》の樋竹の中へすぽりと入って、ちょっと黒い頭だけ出して、上から籠を覗込む。嘴に小さな芋虫を一つ銜え、あっち向いて、こっち向いて、ひょいひょいと見せびらかすと、籠の中のは、恋人から来た玉章《たまずさ》ほどに欲しがって駈上り飛上って取ろうとすると、ひょいと面《かお》を横にして、また、ちょいちょいと見せびらかす。いや、いけずなお転婆で。……ところがはずみに掛って振った拍子に、その芋虫をポタリと籠の目へ、落したから可笑《おかし》い。目白鳥は澄まして、ペロリと退治た。吃驚仰天《びっくりぎょうてん》したをしたが、ぽんと樋の口を突出されたように飛んだもの。

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