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『婦系図』 青空文庫
朝晩お顔を見ていちゃ、またどんな不了簡《ふりょうけん》が起るまいものでもない、という遠慮と、それに肺病の出る身体《からだ》、若い内から僂麻質《リョウマチス》があったそうで。旁々《かたがた》お邸を出るとなると、力業《ちからわざ》は出来ず、そうかと云って、その時分はまだ達者だった、阿母《おふくろ》を一人養わなければならないもんですから、奥さんが手切《てぎれ》なり心着《こころづけ》なり下すった幾干《いくら》かの金子《かね》を資本《もとで》にして、初めは浅間の額堂裏へ、大弓場を出したそうです。
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