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『婦系図』 青空文庫
私でさえ、これは一番《ひとつ》貴女に願って、逢ってやって頂きたいと思いましたから、今迄幾度か病人に勧めても見ましたけれども、いやいや、何にも御存じない貴女に、こういう事をお聞かせ申すのは、足を取って地獄へ引落すようなもの。あとじゃ月も日も、貴女のお目には暗くなろう。お最惜《いとし》い、と貞造が頭《かぶり》を掉《ふ》ります。
道理《もっとも》だと控えました。もっとも私も及ばずながら医師《いしゃ》の世話もしたんです、薬も飲ませました。名高い医学士でお在《いで》なさるから一ツ河野さんの病院へ入院してはどうか、余所《よそ》ながらお道さんのお顔を見られようから、と云いましたが、もっての外だ、と肯《き》きません。
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