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 『婦系図』 青空文庫

 ほとんど当惑していた処へ、今日のおいでは実に不思議と云っても可い。一言(父よ。)とおっしゃって、とそれまでも望むんじゃないのです。弥陀《みだ》の光《びゃっこう》とも思って、貴女を一目と、云うのですから、逢ってさえ下されば、それこそ、あの、屋中《うちじゅう》真黒に下った煤も、藤の花に咲かわって、その紫の雲の中に、貴女のお顔を見る嬉しさはどんなでしょう。

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