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 『海神別荘』 華・成田屋

女房  困った御婦人です。しかしお可哀相なものでございます。(立つ。舞台暗くなる。――やがて明(あかる)くなる時、花やかに侍女皆あり。)
公子。椅子に凭(よ)る。――その足許に、女倒れ伏す――疾く既に帰り来(きた)れる趣。髪すべて乱れ、袂(たもと)裂け帯崩る。
公子  (玉盞(ぎょくさん)を含みつつ悠然として)故郷はどうでした。・・・どうした、私が云った通(とおり)だろう。貴女の父の少(わか)い妾は、貴女のその恐ろしい蛇の姿を見て気絶した。貴女の父は、下男とともに、鉄砲をもってその蛇を狙ったではありませんか。渠等(かれら)は第一、私を見てさえ蛇体だと思う。人間の目はそういうものだ。そんな処に用はあるまい。泣いていては不可ん。

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