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『天守物語』
泉鏡花を読む
桔梗 あれ、人ぎきの悪いことを。――いつ私たちがなまけましたえ。
薄 まあ、そうお言ひの口の下で、何をしておいでだらう。二階から目薬とやらではあるまいし、お天守の五重から釣をするものがありますかえ。天の川は芝を流れはいたしません。富姫様が、よそへお出掛け遊ばして、いくら間があると申したつて、串戯《じょうだん》では
ありません
。
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