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『婦系図』 青空文庫
だってどこに転がっていたって、皆《みんな》お金子が要るんでしょう。どこから出て? いずれ借りるんだわ。また河野の家の事を知っていて、高利で貸すものがあるんだから困っちまう。千と千五百と纏《まとま》ったお金子で、母様が整理を着けたのも二度よ。洋行させる費用に、と云って積立ててあった兄さんの分は、とうの昔無くなって、三度目の時には皆私たち妹の分にまで、手がついたんじゃありませんか。
妙子さんの話がはじまってからは、ちょうど私も北町へ行っていて知っているけれど、それは、気の毒なほど神妙になったのに。……
もともと気の小さい、懐育ちのお坊ちゃんなんだから、遊蕩《あそび》も駄々で可《よ》かったんだけれど、それだけにまた自棄になっちゃ乱暴さが堪らないんだもの。
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