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 『婦系図』 青空文庫

 過日《いつか》何と言いました。あの合歓の花が記念だから、夜中にあすこへ忍んで行く――虫の音や、蛙《かわず》の声を聞きながら用水越に立っていて、貴女があの黒塀の中から、こう、扱帯《しごき》か何ぞで、姿を見せて下すったら、どんなだろう。花がちらちらするか、闇《やみ》か、蛍か、月か、明星か。世の中がどんな時に、そんな夢が見られましょう――なんて串戯《じょうだん》云うから、洗濯をするに可いの、瓜が冷せて面いのッて、島山にそう云って、とうとうあすこの、板塀を切抜いて水門を拵《こしら》えさせたんだわ。

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