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 『高野聖』 泉鏡花を読む

(白桃の花だと思ひます。)と弗と心付いて何の気もなしにいふと、顔が合うた。
 すると、然も嬉しさうに莞爾して其時だけは初々しう年紀も七ツ八ツ若やぐばかり、処女の羞を含んで下を向いた。
 私は其まゝ目を外らしたが、其一段の婦人の姿が月を浴びて、薄い煙に包まれながら向う岸の〓《しぶき》に濡れて黒い、滑かな大きな石へ蒼味を帯びて透通つて映るやうに見えた。

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