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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 てんでんが芋〓《ずいき》の葉を捩《も》ぎりまして、目の玉二つ、口一つ、穴を三つ開けたのを、ぬっぺりと、こう顔へ被ったものでござります。大《おおき》いのから小さいのから、その蒼白い筋のある、細ら長い、狐とも狸とも、姑獲鳥《うぶめ》、とも異体の知れぬ、中にも虫喰のござります葉の汚点《しみ》は、癩《かったい》か、痘痕《あばた》の幽霊。面を並べて、ひょろひょろと蔭日向、藪の前だの、谷戸口《やとぐち》だの、山の根なんぞを練りながら今の唄を唄いますのが、三人と、五人ずつ、一組や二組ではござりませんで。
 悪戯が嵩じて、この節では、唐黍の毛の尻尾《しっぽ》を下げたり、あけびを口に啣えたり、茄子提灯で闇路《やみじ》を辿って、日が暮れるまでうろつきますわの。
 気に成るのは小石を合せて、手ん手に四ツ竹を鳴らすように、カイカイカチカチと拍子を取って、唄が段々身に染みますに、皆が家へ散際には、一人がカチカチ石を鳴らして、

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