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 『天守物語』 泉鏡花を読む

夫人 何、鷹をそらした、その越度、その罪過、あゝ人間と云ふものは不思議な咎《とが》を被《おほ》せるものだね。其の鷹は貴方が勝手に鳥に合せたのではありますまい。天守の棟に、世にも美しい鳥を視《み》て、それが欲しさに、播磨守が、自分で貴方にいひつけて、勝手に自分でそらしたものを、貴方の罪にしますのかい。
図書 主《しう》と家来でございます。仰せのまゝ生命《いのち》をさし出しますのが臣たる道でございます。
夫人 その道は曲つて居ませう。間違つたいひつけに従うのは、主人に間違つた道を踏ませるのではありませんか。

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