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 『半島一奇抄』 青空文庫

「ははは、一つばなし。……ですが事実にも何にも――手前も隣郡のお附合、……これで徽章《きしょう》などを附けて立会いました。爺様の慌てたのを、現にそこに居て、存じております。が、別に不思議はありません。申したほどの嶮道《けんどう》で、駕籠《かご》は無理にもどうでしょうかな――その時七十に近い村長が、生れてから、いまだかつて馬というものの村へ入ったのを見たことがなかったのでございますよ。」
「馬を見て鼠……何だか故事がありそうで変ですが――はあ、そうすると、同時に、鼠が馬に見えないとも限りませんかしら。」
「は?」

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