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 『薬草取』 青空文庫

「や、ものを言っても一つ一つ谺《こだま》に響くぞ、寂《さび》しい処《ところ》へ、能《よ》くお前さん一人で来たね。」
 女は乳《ち》の上へ右左、幅広く引掛《ひっか》けた桃色の紐に両手を挟《はさ》んで、花籃《はなかご》を揺直《ゆりなお》し、
「貴方《あなた》、その樵夫《きこり》の衆《しゅう》にお尋ねなすって可《よ》うございました。そんなに嶮《けわ》しい坂ではございませんが、些《ちっ》とも人が通《かよ》いませんから、誠に知れにくいのでございます。」

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