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 『天守物語』 泉鏡花を読む

薄 まあ、そうお言ひの口の下で、何をしておいでだらう。二階から目薬とやらではあるまいし、お天守の五重から釣をするものがありますかえ。天の川は芝を流れはいたしません。富姫様が、よそへお出掛け遊ばして、いくら間があると申したつて、串戯《じょうだん》ではありません。
撫子 否《いえ》、魚を釣るのではございません。
桔梗 旦那様の御前に、丁《ちやう》ど活けるのがございませんから、皆で取つて差上げようと存じまして、花を……あの、秋草を釣りますのでございますよ。

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