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 『縁結び』 青空文庫

 と傍《かたわら》へ坐らせて、お君が、ちゃんと膝をついた拍子《ひょうし》に、何と思ったか、ずいと立ってそこらを見廻したが、横手《よこって》のその窓に並《なら》んだ二段に釣《つ》った棚《たな》があって、火鉢《ひばち》燭台《しょくだい》の類、新しい卒堵婆《そとば》が二本ばかり。下へ突込んで、鼠の噛《かじ》った穴から、い切《きれ》のはみ出した、中には骨でもありそうな、薄気味の悪い古葛籠《ふるつづら》が一折。その中の棚に斜《はす》っかけに乗せてあった経机《きょうづくえ》ではない小机の、脚を抉《えぐ》って満月を透《すか》したはいいが、雲のかかったように虫蝕《むしくい》のあとのある、塗《ぬ》ったか、古びか、真黒な、引出しのないのに目を着けると……

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