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 『婦系図』 青空文庫

「貴女が困っているものを、何も好き好んで表向《おもてむき》にしようと言うんじゃない。不実だの、無情だの、私の身体《からだ》はどうなるの、とお言いなさるから、貴女の身体は、疑の晴れくもりで――制裁を請けるんだ、と言うんです。貴女ばかり、と言ったら不実でしょう。男が諸共に、と云うのに、ちっとも無情な事はありますまい。どうです。」
 と言うを斜めに視て、
「ですから、そんな打破《ぶちこわ》しをしないでも、妙子さんさえ下さると、円満に納まるばかりか、私も、どんなにか気が易《やす》まって、良心の呵責を免れることが出来ますッて云うのにね。肯《き》きますまい! それが無情だ、と云うんだわ。名誉も何も捧げている婦《おんな》の願いじゃありませんか、肯いてくれたって可いんだわ。」

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