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 『婦系図』 青空文庫

「その言分というのは、こうだ。どうも、あの魚屋も可いが、門の外から(おう)と怒鳴り込んで、(先公居るか。)は困る。この間も御隠居をつかまえて、こいつあ婆さんに食わしてやれは、いかにもあんまりです。内じゃがえんに知己《ちかづき》があるようで、真《まこと》に近所へ極《きまり》が悪い。それに、聞けば芸者屋待合なんぞへ、主に出入《ではい》りをするんだそうだから、娘たちのためにもならず、第一家庭の乱れです。また風説《うわさ》によると、あの、魚屋の出入《でいり》をする家は、どこでも工面が悪いって事《こっ》たから、かたがた折角、お世話を願ったそうだけれど、宜しいように、貴下《あなた》から……と先ずざっとこうよ。」
 め組より、お蔦が呆れたをして、
「わざわざその断りに来なすったの。」

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