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 『春昼』 泉鏡花を読む

「あの橋の取附きに、松の樹で取廻して――松原はづツと河を越して広い洲の林になつて居りますな――而して庭を広く取つて、大玄関へ石を敷詰めた、素ばらしい門のある邸がございませう。あれが、それ、玉脇の住居で。
 実はあの方を、東京の方がなさる別荘を真似て造つたでありますが、主人が交際ずきで頻と客をしまする処、いづれ海が、何よりの呼物でありますに。此の久能谷の方は、些と足場が遠くなりますから、すべて、見得装飾を向うへ持つて参つて、小松橋が本宅のやうになつて居ります。

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