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 『婦系図』 青空文庫

「はい、色艶が悪いから、控所の茶屋で憩《やす》むように、と皆さんが、そう言って下さいましたから、好《い》い都合に、点燈頃《あかりのつきごろ》の混雑紛れに出ましたけれど、宅の車では悪うございますから、途中で辻待のを雇いますと、気が着きませんでしたが、それが貴下《あなた》、片々蠣目《かきめ》のようで、その可恐《こわ》らしい目で、時々振返っては、あの、幌の中を覗きましてね、私はどんなに気味が悪うござんしてしょう。やっとこの横町の角で下りて、まあ、御門まで参りましたけれども、もしかお客様でも有っては悪いから、と少時《しばらく》立っておりましたの。」

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