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 『天守物語』 泉鏡花を読む

夫人 否《いえ》、否《いえ》、かどだてて言籠《いひこ》めるのではありません。私の申すことが、少しなりともお分りになりましたら、あの其の筋道の分らない二三の丸、本丸、太閤丸、廓内《くるわうち》、御家中《ごかちう》の世間へなど、もうお帰りなさいますな。銀《しろがね》、黄金《こがね》、球、珊瑚、千石万石の知行より、私が身を捧げます。腹を切らせる殿様のかはりに、私の心を差上げます。私の生命を上げませう。あなたお帰りなさいますな。

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