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 『春昼』 泉鏡花を読む

 其処で、去年の夏頃は、御新姐、申すまでもない、そちらに居たでございます。 で其の――小松橋を渡ると、急に遠目金を覗くやうな円い海の硝子へ――ぱつと一杯に映つて、とき色の服の姿が浪の青いのと、巓の白い中へ、薄い虹がかゝつたやうに、美しく靡いて来たのがある。……
 と言はれたは、即ち、それ、玉脇の……でございます。
 しかし、其時はまだ誰だか本人も御存じなし、聞く方でも分りませんので。どういふ別嬪でありました、と串戯にな、団扇で煽ぎながら聞いたでございます。

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