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 『春昼』 泉鏡花を読む

 しかし、其時はまだ誰だか本人も御存じなし、聞く方でも分りませんので。どういふ別嬪でありました、と串戯にな、団扇で煽ぎながら聞いたでございます。
 客人は海帽を脱いだばかり、未だ部屋へも上らず、其の縁側に腰をかけながら。
(誰方か、尊いくらゐでした。)」

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