検索結果詳細


 『婦系図』 青空文庫

 音訪《おとな》う間も無く、どたんと畳を蹴《け》て立つ音して、戸を開けるのと、ついその框に真《まっか》な灯の、ほやの油煙に黒ずんだ小洋燈《こランプ》の見ゆるが同時で、ぬいと立ったは、眉の迫った、目の鋭い、細面《ほそおもて》の壮佼《わかもの》で、巾狭《はばぜま》な単衣に三尺帯を尻下り、粋《いなせ》な奴《やっこ》を誰とかする、すなわち塾の(小使)で、怪! 怪! 怪! アバ大人を掏損《すりそ》こねた、万太《まんた》と云う攫徒《すり》である。

 3494/3954 3495/3954 3496/3954


  [Index]