検索結果詳細
『婦系図』 青空文庫
「お医者は直ぐに呼んで来たがね、もう不可《いけね》えッて、今しがた帰ったんで。私《わっし》あ、ぼうとして坐っていましたが、何でもこりゃ先生に来て貰わなくちゃ、仕様がないと、今やっと気が附いて飛んで行こうと思った処で。」
「そんな法はない。死ぬなんて、」
と飛び込むと、坐ると同時《いっしょ》で、ただ一室《ひとま》だからそこが褥《しとね》の、筵のような枕許へ膝を落して、覗込《のぞきこ》んだが、慌《あわただ》しく居直って、三布蒲団《みのぶとん》を持上げて、骨の蒼《あお》いのがくッきり見える、病人の仰向けに寝た胸へ、手を当てて熟《じっ》としたが、
3508/3954
3509/3954
3510/3954
[Index]