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『義血侠血』 青空文庫
「いや、理屈を言うわけではないがね、目的を達するのを報恩《おんがえし》といえば、乞食も同然だ。乞食が銭をもらう、それで食っていく、渠らの目的は食うのだ。食っていけるからそれが方々で銭を乞《もら》った報恩《おんがえし》になるとはいわれまい。私は馬方こそするが、まだ乞食はしたくない。もとよりお志は受けたいのは山々だ。どうか、ねえ、受けられるようにして受けさしてください。すれば、私は喜んで受ける。さもなければ、せっかくだけれどお断わり申そう」
とみには返す語《ことば》もなくて、白糸は頭を低《た》れたりしが、やがて馭者の面を見るがごとく見ざるがごとく〓《うかが》いつつ、
「じゃ言いましょうか」
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