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 『日本橋』 青空文庫

 朽ちた露地板は気前を見せて、お孝が懐中で敷直しても、飯盛さえ陣屋ぐらいは傾けると云うのに、芸者だものを、と口惜がっても、狭い露地は広くならぬ。
 車は通らず、雨傘も威勢よくポンと轆轤を開いたのでは、羽目へ当って幅ったいので、湯の帰りにも半開、春雨|捌きの玉川|翳。
 美人のこの姿は、浅草|海苔と、洗髪と、お侠と、婀娜と、(飛んだり刎ねたり。)もちょっと交って、江戸の名物の一つであるが、この露地ばかり蛇目傘の下の柳腰は、と行逢うものは身の毛を悚立てて、鶯の声の媚いて濡れたのさえ、昼間も時鳥の啼く音を怪む。

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