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『婦系図』 青空文庫
と云う呼吸《いき》づかいが荒くなって、毛布《けっと》を乗出した、薄い胸の、露《あら》わな骨が動いた時、道子の肩もわなわなして、真白な手の戦《おのの》くのが、雪の乱るるようであった。
「安東村へおともをしたのは……夢ではないのでございますね。」
早瀬は差置かれた胸の手に、圧し殺されて、あたかも呼吸の留るがごとく、その苦《くるしみ》を払わんとするように、痩細った手で握って、幾度も口を動かしつつ辛うじて答えた。
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