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 『婦系図』 青空文庫

 早瀬は差置かれた胸の手に、圧し殺されて、あたかも呼吸の留るがごとく、その苦《くるしみ》を払わんとするように、痩細った手で握って、幾度も口を動かしつつ辛うじて答えた。
「夢ではありません、が、この世の事ではないのです。お、お道さん、毒を、毒を一思いに飲まして下さい。」
 と魚《うお》の渇けるがごとく悶ゆる白歯に、傾く鬢からこぼるるよと見えて、衝《つ》と一片《ひとひら》の花が触れた。

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