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 『婦系図』 青空文庫

 壇の下から音もなく、形の白い脊の高いものが、ぬいと廊下へ出た、と思うと、看護婦二人は驚いて退《すさ》った。
 来たのは院長、医学士河野理順である。
 ホワイト襯衣《しゃつ》に、縞の粗い慢《ゆるやか》な筒服《ずぼん》、上靴を穿《は》いたが、ビイルを呷《あお》ったらしい。充血した顔の、額に顱割《はちわれ》のある、髯の薄い人物で、ギラリと輝く黄金縁《きんぶち》の目金越に、看護婦等を睨《ね》め着けながら、

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