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『夜行巡査』
青空文庫
八田巡査はきっと見るに、こはいと窶々《やつやつ》しき婦人《おんな》なりき。
一個《ひとり》の幼児《おさなご》を抱きたるが、夜深けの人目なきに心を許しけん、帯を解きてその幼児を膚に引き緊め、着たる襤褸《らんる》の綿入れを衾《ふすま》となして、少しにても多量の暖を与えんとせる、
母
の心はいかなるべき。よしやその
母
子《おやこ》に一銭の恵みを垂れずとも、たれか憐れと思わざらん。
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