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『星あかり』
泉鏡花を読む
ひたと冷い汗になつて、目を〓《みひら》き、殺されるのであらうと思ひながら、すかして蚊帳の外を見た。が、墓原をさまよつて、乱橋から由比ヶ浜をうろついて死にさうになつて帰つて来た自分の姿は、立つて、蚊帳に縋つては居なかつた。
ものゝけはいを、夜毎の心持で考へると、まだ三時には間があつたので、最う最うあたまがおもいから、其まゝ黙つて、
母
上の御名を念じた。――人は恁ういふことから気が違ふのであらう。
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