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 『婦系図』 青空文庫

 とむっくと起きた、早瀬は毛布《けっと》を飜《ひるがえ》して、夫人の裾を隠しながら、寝台に屹と身構えたトタンに、
「院長さんが御廻診ですよう!」と看護婦の金切声が物凄く響いたのである。
 理順は既に室に迫って、あわや開けようとすると、どこに居たか、忽然として、母夫人が立露《たちあらわ》れて、扉《ドア》に手を掛けた医学士の二の腕を、横ざまにグッと圧えて……曰く、

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